センター長あいさつ

2017年11月のCOP23において、英国とカナダは2020~30年に石炭火力を廃止すると宣言し、この宣言にフランスやイタリアなど計25の国と地域が加わりました。脱石炭火力の潮流が世界的に強まるなか、我が国は再生可能エネルギーの導入を加速しながらも、現在でも一次エネルギー供給の80%以上を占める化石燃料の炭素循環的高度利用技術基盤の開発を推進し、化石燃料を利用してもカーボンニュートラルと地球環境保全が実現可能であることを説得力ある形で示す必要があります。
グリーンテクノロジー研究教育センター(以下、GTセンター)は、九州大学筑紫地区の炭素資源国際教育研究センター(平成20年度設置)とエネルギー基盤技術国際教育研究センター(平成25年度設置)を統合して、2018(平成30)年4月に設置されました。GTセンターが取り組んでいる研究の共通キーワードは、「炭素循環社会・産業の基盤となる環境・エネルギー・物質システム」です。GTセンターは、新炭素資源転換技術の研究開発、そして、創・省・蓄エネ技術、エネルギー・資源変換技術および住空間省エネ技術の研究を統合的・横断的に推進し、物質とエネルギーが統合的に変換・貯蔵・利用され、物質が循環する産業・社会システムの姿を世界に先駆けて描くことを理念として掲げています。
GTセンターの特長は、研究パフォーマンスだけでなく、国際性と産学・地域連携にもあります。この特長は、GTセンターの大学院教育への貢献度にも強く反映されており、総理工における大学院国際教育プログラムにおいて大きな役割を果たしてきました。GTセンターは、博士課程教育リーディングプログラム「グリーンアジア国際戦略プログラム」(以下、GAプログラム)の終了を受けて、2019(平成31)年4月にグリーンアジア国際リーダー教育センターを再統合しPhase 2として再発足しました。国際共同研究や産学連携研究を通じた人材育成が肝要である大学院プログラムにおいて、再統合後のGTセンターは筑紫地区のコア組織として機能し、エネルギー関連材料技術のパラダイムチェンジや分散エネルギーシステムをアジアを中心として世界展開する人材を育成する重要な役割を担っています。
実験科学と計算科学の融合や地域社会システムのデザインを実践する大学院教育は、第4次産業革命やSociety 5.0の実現に向けた九州大学における人材育成の趣旨にも合致するものです。当センターの活動に皆様のご理解とご協力を賜れば幸いです。

2019年4月
九州大学グリーンテクノロジー研究教育センター長 大瀧 倫卓
(総合理工学研究院・教授)